第三次世界大戦途中経過報告
合衆国の製作した異物質合成人間、通称キメラは戦線において多大な戦果を齎したが、同時に精神・情緒不安定、無差別暴力など欠陥部分も数多く発見され、後に製作が中止される。
製作された209体のうち、97体は廃棄処分、50体は冷凍保存、残存騎体のみ戦線への投入を続行。
そしてその後、日本の製作した対隊兵器イヴが合衆国軍に編入され、キメラと共にその高いポテンシャルを評価される。
対してヨーロッパ側は過去の遺物、魔術と対国魔術式兵器、PONによる合衆国側への反抗を試みる。
だが魔術師の八割は既に死滅。
現在の脅威は既にPONのみとなっている。
そして目下の合衆国の課題はPONの奪取である。
キメラの破壊力、イヴの組織力をもってしても太刀打ち出来ないPON。
《史上最強》の名に恥じない能力を持ったソレの奪取さえ成功してしまえば、おそらく合衆国は天下無双の力を得るだろう。
………報告は以上である。
×月××日 R文書 製作者 ―――――
我々の所属する第二実験室で、ソレは起きた。
イヴα型46の暴走。
コレは前々から予期されていた事態だ。
だが、今回ばかりは、もう如何しようもないらしい。
01から46、ロストナンバーを含め、全46体。
彼等は現在製作されているβ型47以降のイヴと決定的に異なった製作過程を経ている。
α型は、[人間]という殻を一から造られている。
つまり、α型は人造人間、β型は改造人間、とでも云えばよいか。
より高等な性能を追求した結果、我々科学者はより頑丈な人間を造るべきという結論に辿り着いた。
[人間]を創造する――――――きっと倫理にも宗教心にも反するその行為は、しかしその背徳心は、我々をより昂ぶらせ、より研究へとのめり込ませた。
そしてα型はまた、我々の期待以上の働きを見せてくれた。
………だが。
だが、その有能なα型には、決定的な欠落があった。
………一から造られた人造人間。
[人間]という殻に包まれた、有機物。
だが所詮は、人間の造りだした弩三流の模造品。
人間が神の造り出したその芸術を真似る事など、そもそも不可能だったのだ。
――――――故に、α型には欠陥があった。
一定期間を経て、その肉体を構成する筋繊維、骨格、神経、血管、そしてその精神は突如崩壊を始めた。
一体のイヴが崩壊すると、まるで堰を切ったかのように次々とイヴが壊れていった。
我々はその事態に、様々な案を投じた。
万一の時に備え、各部署にシェルターも設置した。
イヴの動きを封じる為に至る処に催眠ガスの噴出口も造った。
全ては万全。
β型も96まで製作し終え、α型はじきに処分される手筈だった。
………だが。
まさかアレが暴走するとは………。
もっとも優秀で、精神状態も常に安定していた、あのラストナンバーが暴走するとは………。
誰も、思いもしなかったのだ。
おそらく、此処もそう長くは持たないだろう。
じきにアレがやってくる。
何故、今私がこんな事を記しているのか、それは実際の所私にもよくわからない。
後世に何かを伝えたいのか、それともこれは懺悔なのか………。
我々人間は、大きな過ちを犯してしまった。
あまりに神の領域に近づき過ぎた。
太陽に近づき過ぎて、溶け堕ちたイカロスの翼のように、我々も今、その神の鉄槌を受けている。
それがこの惨状だ。
………なんとおこがましい事をしてしまったのだろう。
何故、あの時知的好奇心を抑える事が出来なかったのだろう。
嗚呼、もう駄目だ。
シェルターが突破されてしまった。
目の前の同輩達が薙ぎ払われていく。
私もきっと、*される。
さよなら、お父さん、お母さん。
さよなら、私の愛しの人。
それでは、これでこのぶんし
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