月光が闇を切り裂く静かな夜。

彼は、その屋上で徒手空拳で立っていた。

黒から紅へと変色したその瞳が映し出すのは彼を囲むように陣をとる7つの人影。
彼はそれをただ無言で睨み付けている。
だがその視線は彼らには向けられていない。

一体、何を睨んでいるのだろう。

何を憎んでいるのだろう。

もしくは。

何を愛しているのだろう。

「――――――さて、と」
しばらくすると、その少年は誰にでもなくそう一人ごちた。
すると。
その髪の色が、変色していく。
黒色が、抜けていく。
黒色が、抜け落ちていく。
まるで月の色を映し出すかのように、その色は金色に金色に。
まるで街の色に相対するかのように、その色は金色に金色に。

それが終わり。

侵食が終わって。
其処に残るのは唯一つ。

金髪、紅眼の悪魔。


彼こそが、壊れたブリキ。

麗しの、人間失格。

「……ったく、お前らも物好きだな。オレなんかをわざわざ追って来るなんてな」
相手の男は何も言わず、黒の周りを囲む。
その動きは余りにスムーズで、あたかも一つの生命体のよう。
「………まぁ、いいけどな。……そうだ、せめて名前くらい教えてくれよ。どうせ、これで終わりだろ?」
黒がそういうと、彼らの一人がようやく口を開いた。
その男は黒と然して変わらない年齢の少年だった。
「………ボ、ぼクラの名マえハ、カらもト、シャイろ」
「殻基斜色?……ふぅん……、随分と変わった名前だな。……まっ、オレも人のこと言えねぇか」
――――――さて、これで会話は終わりだ

鴉は一度大きく嘆息して、口元を歪ませる。

嘲るように。

罵るように。

「んじゃ、始めようか」


後始末を、始めよう――――――


「――――――己に、懺悔しな」












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